おととい小春と一緒に帰ったときな、でかいカエルが目の前飛んできてん。そしたらな、小春めっちゃビビって「キャー!」なんて叫んで俺にしがみついてん!めっちゃカワエエやろ、せやから俺、大丈夫やで小春!って言うて守ってあげたんや。周りにおった奴らみんな俺らのラブラブ下校シーン見て羨ましがっとったでホンマ。試合とかコントのときだけちゃうねん、俺ら普段からめっちゃラブラブやねんで。



「・・・」
「なんやねん、なんとか言いや」
「別に聞きたくない話でした」
「なんやと!」
「なんやとじゃないよ私だって小春ちゃんと帰りたい」



カエルくらい私だって追い払える!とかなんとか言ってキャンキャン騒いでいる、最近小春についた悪い虫。俺の小春に付きまとって俺らの仲を邪魔するお邪魔虫。(…まだなんや言うとる、「なんで私にそんな話するの」なんて、そら見せつけのために決まっとるやん)
一頻り言い終わったのかキャンキャン騒ぐ声は止み、あんまし怖くない凄み顔で睨んできよった。っちゅうかなんでこいつ、ここにおんねん。



「…今日、小春ちゃん私と帰るから」
「は!?小春は俺と帰んねんで」
「今日は私と!2人だけの大事な話があるんだから」



2人だけの、を協調して言い放たれた。このドヤ顔、生意気なやっちゃな…!
俺と、2人だけで小春を待つ教室。は携帯を出して弄り始める。見慣れたストラップ、小春とがお揃いで買ったのを、俺も合わせて買ったやつ。(小春とお揃いするなんて生意気やねん)
俺は俺で一人でモノマネの練習をする。(最近の課題は白石のエクスタシー顔や)たまに携帯のシャッター音とフラッシュが俺に向けられて、俺が睨んでは睨み返される。そんな沈黙。
俺も携帯を出して小春と連絡をとる事を試みた。俺とのお揃いのストラップが揺れる。



「ねえユウジ、」
「なん」
「メアドおしえて」



携帯から目を話さずに言う。(はー、ホンマこいつわけわからんやっちゃな)
とりあえず俺も小春当てにメールを打つ手を止めずに続ける。



「なんでそんなん聞くん」
「断られるかなあと思って」
「ほんなら聞くなや」
「ん、アドレス帳増やしたいの」
「わけわからん」
「別にメールしなくたっていいもん」
「はん」



俺が鼻を鳴らしたあと、また沈黙が続く。小春に送ったメールを読み返して返信を待った、が、先に返信が来たのはどうやら俺の携帯ではなく、の方やったみたいで。(くそ。)(いや小春は女友達大事にするタイプやねん、めっちゃエエ子やねん)携帯を眺めるの手が止まった。その後、俺の携帯にも返信が来た。



ユウ君ゴメンね!委員会長引きそうやわ。
先生ったらウチのこと帰してくれへんの、
遅くなりそうやし、ウチ迎え呼ぶから先に帰っててくれる?
でも、ちゃんはちゃんと送ってあげるんよ(ほし)
それじゃあまた明日ね!ちゃんと仲良くね(ハート)



…しゃあないわ。
俺は鞄を背負って椅子をしまい、目の前でいまだ携帯を眺めて固まっているに話しかけてやる。



「帰るで」
「なん、ユウジ、わ、私と帰るの」
「他に誰がおるん、小春に頼まれたから仕方なくや」
「ん、…私もユウジと仕方なく帰る」
「可愛ないやっちゃな」



ばたばたと帰り支度をし、何度か携帯を落としたりなんだりしているをドアの前で待っている間、(焦りすぎやねん)小春のメールを読み返し、考える。
ちゃんはちゃんと送ってあげるんよ』とりあえずこいつを家まで送り届けて、ほんでもって、『ちゃんと仲良くね』



「ごめん、お待たせ」
「おん。なあ」
「なあ、に」
「どうやったら仲良くなれるん」
「え、なんの話?」
「手ぇでも繋ぐんか」



(仲良くする過程がよう分からん)の手を軽くとって言うと、アホみたいな顔して俺を見て、ほんで、俯いてもうた。なんやなんやと下から顔を覗きこむと、
「なんでもないよ!」って何も言うてへんっちゅーねん。
まあ、なんや仲良い感じにはなっているやろう、あ、せや、あとはあれやな



、携帯出しい」
「なんで?」
「メアド送るわ」



俺が携帯を取り出して、見ると、またアホみたいな顔して、おまけにこんどは頬っぺたが真っ赤やった。ほんで、思い切り頷いて、握ってる手ぇを ぎゅうう と握り返してきた。なんや、ほんまわけわからんやつやな。


やじるし


ねえ明日も小春ちゃん忙しいんだって、ユウジ、わ、わた、私と帰る?









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小春以外には無頓着で鈍感なユウジと、小春以外には無頓着 を装う恋する乙女。