一瞬で眠気が全部吹っ飛んだ。それに、心臓が、おかしい。一気に気持ち悪くなって、吐きそうになった。(けど、それを気づかれないように必死だったんだ) ずっと一緒だと思ったから。ずっと君の一番でいられるって、そう、思ったから。 ピリオド 「慈郎ちゃん」 が俺を呼ぶ声が聞こえた。は、寝ている俺の(実際には起きてるわけだけど)隣に座って、俺の顔を覗きこんだ。「おはよう慈郎ちゃん、よだれのあとついてるよ」俺は半分寝たままで、うんおはよう、と返事して口の周りを拭った。が俺の隣に座って話すのは珍しい事でもなんでもなくて、俺が眠くなってにもたれかかることすら、普段からよくあることだった。けど、いつも寝かけている俺にも話しかけてくれるが、沈黙をつくった。それで「慈郎ちゃん」もう一回俺の名前を呼んだ。「なに」ワンテンポ遅れた俺の返事のあと、もう一度口を開いた。 「あのね、わたし岳人と付き合えることになったよ」 がくととつきあえることになったよ。ガラスのコップを落としたような、どこかで変な音がした、ような気がした。付き合う。が、岳人、と。(そうだ、昼休みに2人が話してるのを見かけた、) 「両思いだったんだ」 「うん、そうみたい」 「そっかあー、良かったあ!」 「え、えへへ。ありがとう、嬉しい」 の頭を撫でて「おめでとう」と言った。の幸せそうな顔が可愛くて綺麗だった。(でもこれはおれのじゃない。がくとのためだけにむけられるもの、だ。)昼休み見かけたときすぐに割って入れば良かったのかな。そんなことできないよ。どっちにしろ、おれバカじゃないの。頭を撫でる俺の手に手を重ねて、「ありがとうね」と、もう一度言われた。重ねられた手からは、岳人が好きなんだっていう気持ちがいっぱいいっぱい伝わってきた。岳人のことが。俺じゃなくて、・・・岳人。俺はの頭を撫でる手を止めて、もう一度にもたれかかった。 「ねえ俺たち、友達だよね」 「うん、そうだよ」 「一番の友達?」 「え?うん。どうしたの急に?」 「一番かあ・・・へへ、嬉Cーなあ・・・」 「慈郎ちゃん?」 「うん・・・」 「眠いの?」 「うん・・・」 「!」 声がした。元気で明るい男の子の声。を呼ぶ声。俺のを連れ去っていっちゃう声。行かなくちゃ、って立ち上がるの手を、俺はとっさに掴んでしまった。 「じろう、ちゃん?」 「・・・」 「どうかしたの?」 「、だいすきだよ」 は不思議そうな顔をして「うん。わたしも、だいすきよ」って言ってくれた。それで俺にまたねって手を振って行ってしまった。だいすきだって。嬉しい。俺がの一番だよ、嬉しいよ。 急に視界がぼやけてなにも見えなくなった。おかしいな、俺まだ眠いのかな。 乾いたインクで終止符を打つ。 (気持ちが途切れないんだ おねがい連れて行かないで) |